サイトスワップ

マルチ

マルチの入るサイトスワップ

これまでに見てきたパターンでは、どれも一度に1個のボールしか投げませんでした。しかしボールは片手で2個、3個を同時に投げることも可能で、その投げ方のことをマルチと呼びます。理論的には何個のマルチでも可能です。

サイトスワップ中にマルチを入れるときは、[23] のように大括弧を使って表します。この [23] は2個のボールを、1個は 2 のパターンで投げ、もう1個は 3 のパターンで投げることを意味します。片手に持った2個のボールの、どちらをどう投げるかということを明確に決める必要はなく、[23] と [32] は同じ意味になります。

2個のボールを同時に投げるということは、それまでに2個のボールが片手に集まっていなければなりません。また、ボールを持たない 0 のパターンを括弧内に加えることは意味がありません。例えばマルチの [30] はサイトスワップの 3 と全く同じです。

それではマルチの入った [34]20 の投げ方を見てみましょう。繰り返しを省略しないで書けば [34]20[34]20[34]20… となりますので、これを表にします。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
:
間隔 : 34 2 0 34 2 0 34 2 0 34 2 0

時刻1では右手で2個投げますが、このうち 3 を赤としてみましょう。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
:
間隔 : 34 2 0 34 2 0 34 2 0 34 2 0
:

時刻1で投げるもう1個は青にします。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
:
間隔 : 34 2 0 34 2 0 34 2 0 34 2 0
:

時刻2の左手では黄を投げます。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
:
間隔 : 34 2 0 34 2 0 34 2 0 34 2 0
:

時刻3、6、9、…は何も投げませんので、これで全てのマスが埋まりました。ボールが3個必要であることは、図から明らかですね。

このマルチパターンの具体的な投げ方は次のようになります。右手に赤と青の2個、左手に黄色1個のボールを持った状態から、時刻1で右手の2個を左右の手に分かれるように同時に投げます。時刻2の黄はそのまま左手に持ち続けて、時刻3の右手はボールがないので休みになります。そうこうするうちに赤が左手に落ちてきますので、もともと左手に持っていた黄と合わせて2個を、左右の手に分かれるように投げます。右手に落ちてきた青は持ったままで、落ちてきた赤と合わせて投げ、以下繰り返しです。

マルチを含まないパターンと同様に、マルチパターンからボールの数を調べたり、それがジャグリング可能であるかどうかを判定したりすることができます。基本的には 数理 で説明した内容と同じですが、次の条件が加わります。

ボールの数を調べるときは

  • 大括弧内の数字は全部足して、それが1つの数字であるかのように扱う

とします。[34]20 の場合、[ ] の中は1つの数字であるかのように扱いますので、数字は [34]、2、0 の3個となります。ここで平均を求めると ((3 + 4) + 2 + 0) ÷ 3 = 3 となり、数字だけからでもこのパターンが3ボールであることが分かります。

パターンがジャグリング可能であるかどうかを判定するには、

  • 大括弧内の数字は全て同じ順位で、長さを1とする
  • 計算結果の値には、大括弧内の数字と同じ数だけその順位の剰余類があることが必要十分である

という2つのルールが追加されます。では具体的に [34]20 を計算してみましょう。大括弧内の 3 と 4 はどちらも順位 1 なのでそれぞれに 1 を加えます。

3 + 1 = 4
4 + 1 = 5
2 + 2 = 4
0 + 3 = 3

大括弧内の数字は長さを1とするため、全体の長さは 3 になります。そこで 3 を法とする各数字の剰余類を求めると、

3 + 1 = 4 ≡ 1 (mod 3)
4 + 1 = 5 ≡ 2 (mod 3)
2 + 2 = 4 ≡ 1 (mod 3)
0 + 3 = 3 ≡ 0 (mod 3)

となり、1 が2つ、2 と 0 が1つずつになりました。大括弧内の数字はどちらも順位 1 でしたから、これでこのパターンがジャグリング可能であると分かります。

別の見方をすれば、2つ目の追加条件は

  • 加えた数字と結果の数字が(剰余類で)同じであればジャグリング可能である

ということでもあります。上の場合4つの数字に対して 1、1、2、3 を加えたら、結果が 1、1、2、0 になったので、ジャグリング可能(3 と 0 は mod 3 において同値)というわけです。

マルチの入るシンクロ

次に、シンクロにマルチが入るパターンを見てみます。シンクロとマルチの両方の説明を読めば、シンクロマルチパターンの作成方法は自ずと明らかだと思います。

表記方法はシンクロの記号法に基いています。すなわち、登場する数字は全て偶数で反対側の手に投げるときは数字の後に x を付けます。マルチの大括弧の中には数字と x が混在しますが、x は奇数なので、サイトスワップの数字ではなく反対の手に投げる記号であると判断できます。

ここでは (2,4)([44x],2x) というパターンの解析を試みます。シンクロの場合、2単位時間ごとにボールを投げる決まりでしたから、

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 44x 2 44x 2 44x
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x

となります。ボールの数は計算式 (2 + 4 + (4 + 4) + 2) ÷ 4 = 4 によって4個だと分かりますので、赤青黄緑の4種類を図に書き入れます。

時刻 : 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
左手 : 2 44x 2 44x 2 44x
右手 : 4 2x 4 2x 4 2x
左手 :
右手 :

これで投げ方が明らかになりました。時刻3、7、11、…では左右同時に3個のボールを投げる上に、そのとき右手のボールは素早く左手に投げなければいけないという、難しいパターンです。